2006年07月31日 (22:38)
ぽっぽっぽー、サドぽっぽー
The Magnificent Thad Jones
(Blue Note 1527)
Thad Jones
1. April in Paris
2. Billie-Doo
3. If I Love Again
4. If Someone Had Told Me
5. Thedia
Thad Jones, Trumpet
Billy Mitchell, Tenor Sax
Barry Harris, Piano
Percy Heath, Bass
Max Roach, Drums
1956
サド・ジョーンズがBlue Noteへ1956年に録音した「鳩ぽっぽ」のジャケットで有名なアルバム。アルバム・タイトルを「素晴らしきサド・ジョーンズ」とアルフレッド・ライオンに名付けさせた演奏が、ここに収められている。
トランペッターのサド・ジョーンズは、ピアノのハンク・ジョーンズを兄にもち、ドラムのエルビン・ジョーンズを弟にもつ。この兄弟、きっと血管に血と一緒にJazzが流れているんだろうな。
「鳩のサド・ジョーンズ」と呼ばれるジャケットながら彼と鳩との間には、微妙な距離感が有る。鳩は彼から一定の距離をおいて、それ以上近づこうとはしていない。サド・ジョーンズ自身も目を瞑って煙草をくゆらせている。お互いがその存在を認識しながらも、必要以上の関係を拒否しているような不思議な空間だ。
全5曲が5分以上有りThediaに至っては10分を越す、比較的自由に演奏させてもらったアルバムだと言えるだろう。2管にはなっているが、あくまでもサドのトランペットをメインにした個人名のアルバムらしい出来になっている。
1曲目に彼自身の演奏で有名になったApril in Parisを持ってきている。1955年にカウント・ベイシーでの録音で録音され大ヒットした曲は、1956年ではリバイバルと言うには早過ぎる再演だ。彼自身のトランペッターとしてだけではなく、アレンジャーとしての自信の表れだろう。
全体的に緩やかに進む演奏は、サドのトラッペットに導かれて独特の世界を作り出している。彼のトランペットは周囲の演奏との融合を多少拒否しているようにも感じる。何処かしら「孤高」とか「孤独」の言葉が頭に浮かんでくる。
安易で馴れ馴れしい人間関係を否定しているようにも感じてしまう涼やかな空間は、個人的には極めて心地良い音世界を作り出している。何故ここまで冷静な演奏が出来るのか不思議なくらいだ。
緩やかに、そして丁寧に紡ぎ出された音。鳩と一緒に写りながらも何処かしら一人ぼっちを連想させる関係の希薄な距離。
そう言えばブラウニーが亡くなって1カ月と経っていない7月14日にこのアルバムは録音されたのだった。
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